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書籍『空手の理から明かされた宮本武蔵五輪の書』柳川昌弘著(福昌堂)

各界指導者必読の書

 本書は独自の空手理論を雑誌記事や数々の著書で公開してきた柳川昌弘先生による剣聖宮本武蔵が書き記した『五輪書』の新解釈本です。初版は2000年6月とありますから、前著の『一撃必倒への道』から、あまり間をおかず、続けざまに出版されました。

 『五輪書』の地・水・火・風・空の5巻について、各項目ごとに現代語訳と解説の繰り返しの構成となっており、巻末には『兵法九箇条』と『独行道』の解説もなされています。

 題名のとおり『空手の理から明かされた〜』とありますから、読み進めるには、柳川先生の説く空手の理の内容理解が必須となります。そもそも、足捌き一つとってみても、武蔵が「死ぬ足」と称する「浮き足」、「強く踏む足」、「跳び足」を常識としている現代武道修行者に『五輪書』を真に理解することは不可能と言っても過言ではないと思います。

 柳川先生の著書を一つも読んでいないという方は、せめて『武道空手の理』を読んで前提条件をクリアした上で挑戦した方が無難だと思います。余力があるなら、『一撃必倒への道』も事前に読んでおくと良いでしょう。何故なら『一撃必倒への道』が、本書の導入ともいうべき内容だからです。

 空手の理への理解が深まっていれば、『五輪書』の内容と柳川先生の主張が何の矛盾もなく見事に合致していることに驚くことになるでしょう。まるで「正中線」「居着かぬ足捌き」「浮き身」などの空手の理が、『五輪書』を真に理解するための鍵であるかのようです。『五輪書』というパズルに、空手の理というピースを一つ一つはめていくような感覚で、読み進めていくことができるはずです。