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書籍『武道空手の理』柳川昌弘著(福昌堂)

 本書は月刊空手道誌上で連載されていた『武道空手の理』が1冊にまとめられた柳川昌弘先生の空手理論書第3弾です。初版は1998年9月で、『武道空手の理』の連載は1992年8月号から始まり、1995年1月号が最終回でしたから、連載終了から3年、『続・空手の理』からは6年、正にファン待望の書でした。

 内容的には『空手の理』『続・空手の理』と重複する部分も多々ありますが、修行時代の逸話は少なめで、柳川空手習得のために必要な鍛錬法や基本技の解説に比重が置かれ、さらに柳川空手で重要とされる「正中線、正中面の理」、「居着かぬ足捌き」、「変化技」等の術理についても前作よりも突っ込んだ内容となって、盛りだくさんな印象です。

 特筆すべきはマキワラ突きのメリットから効用、マキワラの突き方や段階的な鍛錬方法について約20ページも割いているところです。『空手の理』では、マキワラに関する数々の逸話が語られ、『続・空手の理』の中でも「著者の場合、大概のスランプはマキワラ突きやサンドバックの突き(蹴りも)にすべてをかけて乗り切った。」とあるように、マキワラ鍛錬に並々ならぬ思いをお持ちの柳川先生が、マキワラに関して具体的な突き方、段階的鍛錬方法を綴った最初の著作となります。

 しかし、月刊空手道の連載すべてを保存している私からすると残念な部分もいくつかあります。1つは、連載の単行本化ということで、基本的には連載の順番どおり構成され、章ごとに要約が挿入される形になっていますが、ページの都合でしょうか、実は一部割愛されている部分があることです。2つ目は、挿入写真についてで、連載ではほとんどの写真について柳川先生ご本人がモデルになっておられるのに対し、こちらは大部分がお弟子さんに差し替わっていることです。前述のマキワラの突き方や段階的な鍛錬方法について解説している部分も、連載では柳川先生の写真が使われていたのに対し、本書ではイラストに差し替えられているので、読む人によってはがっかりされることがあるかもしれません。

 とは言え、本書の内容が素晴らしいことに違いはありません。特に『空手の理』、『続・空手の理』を知らない方が、柳川先生の武道空手の全体像を手っ取り早く把握したい場合には、本書から読み始めるのも良いと思います。