武の杜

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書籍『続・空手の理』柳川昌弘著(福昌堂)

 この本に出会った時期は前述の『空手の理』と同時期ですが、両方購入しようと書店に赴いたとき、たまたま『空手の理』が置かれていなかったため、実は入手したのはこちらが先になります。柳川昌弘先生の空手理論書第2弾で、初版は1992年です。

 前書きに「空手の理の不足をカバーすると共にもう一歩進んだ内容のものを、つまりもっと分かりやすい「理」の説明とそのための効果的練習方法をお伝えするのが本書の目的である。」とあるように、前作『空手の理』に比べて、内容的には鍛錬法や技術解説に重きを置かれています。前作で紹介済みの鍛錬法もやり方や注意点を補完して再度解説しているので、単純に技術的な部分を知りたい方には前作よりもこちらの方がオススメです。

 技術的な内容では、先生が空手の基本であると仰る(歩み足)順突きの上達法として紹介している『坂道練習法』が印象的で、早速自主練習のメニューに採り入れました。

 柳川先生は前著も含め、(歩み足)順突きの初動は当時当たり前だった後ろ足によって地面を蹴ったり、前足の力で体を引き寄せたりするのではなく、前足側の膝を抜くことで、自身の位置エネルギーを前進するための原動力(運動エネルギー)に変換するのだと主張されていました。この『坂道練習法』は最初は下り坂で行い、自身の位置エネルギーが前足側の膝を抜くことにより、前進力に変換されること、初動で後ろ足で地面を蹴ったり、前足の力で体を引き寄せたりなど余計な力を使うと移動後に止まれなくなること、上り坂では軸足が後ろ足になる過程のあり方を体感させることができる優れた練習法だと思います。

 ピンアン二段とナイハンチの形の詳しい解説もなされています。「私の空手はナイハンチ、ピンアン二段の形から影響を受けている」と前著で述べられていましたから、重要な部分だと思います。

 月刊空手道(1990年3月号)に掲載されていた甲野善紀先生との交流後の甲野先生、柳川先生双方の感想、柳川先生から甲野先生に宛てた私信も収められていて、大変興味深いです。

 技術解説もさることながら、心構えの大切さ、読者にこれから訪れるであろう数々のスランプの内容とそれらからの脱出法までもがかなりの分量割かれていて、空手修行者には大変参考になることと思います。

 是非、前著『空手の理』と併せて読むことをオススメします。