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書籍『甦る古伝武術の術理─井桁崩し──その誕生と展開』甲野善紀著(合気ニュース)

井桁術理の発見

 『続・空手の理』を読んで甲野善紀先生のことを知り、最初に手にしたのがこの著作でした。合気ニュースの編集長だった故・スタンレー・プラニン氏が聞き手となって、甲野先生の技の進展・経過を伝える一連の術理本シリーズの第一弾です。初版は1993年12月です。

 本作には、黒田鉄山先生との交流からヒントを得て、さらに術理の共同開発者ともいうべき永野順一氏の協力のもと、ヒンジ運動、ワイパー運動のような支点が固定された単純な円運動を否定する術理、「井桁術理」の発見とその後の進展・経過が記載されています。甲野先生のこれ以前の技と比較して変わった部分は「まわさない、ねじらない」だけに留まりません。甲野先生はこれまで、肥田式や合気道の影響で強く腰を反る姿勢をとっていましたが、それを改め、胸を下ろし、背中を下ろすことを強調しています。

 座った状態の自身の額を相手に抑えさせた状態から立ちあがることで、軸が立っている姿勢かどうかや浮き身の検証にもなる「仙椎の軸立」は大変参考になりましたし、井桁術理を掴むための手がかりとなる一人稽古法として写真付きで詳述されている「前後切り」を見よう見まねで稽古したところ、刀を自身の体を前後に分ける「冠状面」を通す体捌きを習得することで、「正中面」の感覚の理解・体得に繋がる等、自分の稽古を進めていく上で益するところが非常に多かったです。